デザインを通じて、古いものに新たな価値を生み出す--現代において、マッチ棒でさえも人気者に変えてしまうブランドOIMU
One Day I Met Youーーあなたに出会ったある日。というロマンチックなフレーズを文字ったOIMU(オイミュ)。
OIMUは2015年からソウルをベースに活動するライフスタイルブランド兼デザインスタジオ。過去と現在の価値をつなぐため、多様な印刷媒体や製品、空間、展示などを通じてデザイン活動を行います。
ブランドの活動目的は、時が過ぎるに連れて世の中で忘れられていくものにストーリーを吹き込み、日常でわたしたちに遭遇させること。
記憶に存在する古いものと韓国の素材を融合させて、新たなアイデンティティを作り出します。
OIMUの代表は1980年代生まれ。デジタル化が進むなか、祖父母と親世代からはアナログ的要素を吸収しながら成長した世代です。急速に成長を続ける韓国で生まれ育った代表ですが、アメリカやヨーロッパを訪れると、昔の伝統的なものを大切にする姿がとても印象に残ったといいます。
韓国に戻り、新しいものを速く受け入れることに慣れすぎた環境で、忘れられていく韓国らしさが残る古いものの良さにフォーカスし、現代人たちの日常に送り込むというミッションを、自らみつけ出しました。
そのため、OIMUはこれまでいくつかのプロジェクトを遂行。ここではその一部をご紹介します。
●マッチプロジェクト
まず代表が目をつけたのはマッチです。OIMUの初めてのプロジェクト。
韓国に存在する最後のマッチ工場のドキュメンタリーを観た代表。
誰もが知るマッチという存在だけれど、ライターが普及したことでどんどん失われていくことを残念に思い、リサーチを開始。国内のマッチ産業が途絶えないように、なにかできることはないか?
「マッチを売る」と話したとき、誰もが首を振ったそうですが、反対を押し切る形でOIMUは2015年に商品を発売。すると瞬く間に韓国でクチコミが溢れ、有名企業からのコラボ要請が殺到しました。
これまで、韓国の大手書店教保文庫や化粧品会社Huxleyなどとコラボ。数千の在庫があったそれぞれのマッチが飛ぶように売れました。
既存のマッチの10倍ほどもする価格なのに、なぜここまで人気になったのか?
それは、そのデザイン性。マッチは四角い箱、という固定概念を覆すパッケージング、そしてマッチの頭の部分はカラフルに。デザインを通じて新たなアイテムとして誕生させたおかげで関心をもつ人が増えたといいます。たしかに見ているだけでも綺麗だし、使いたくなるようなユニークさが光ります。
マッチを通して新しい価値を生み出すとともに、さらには慈善活動に参加しました。
- セウォル号
2014年4月16日に韓国の大型旅客船が沈没した事故「セウォル号沈没事件」追悼のためOIMUはマッチのデザインに着手。
忘れてはいけないこと、忘れられてはならないことーー箱にはセウォル号のイラストと「The Day for Remember(忘れられない日)」の文字がプリントされています。
制作費を除いた収益金額を遺族や市民団体が立ち上げた4.16連帯に寄付しました。
- 明洞聖堂
さらに明洞にある聖堂とコラボしてろうそくとマッチを制作。クリスマスエディションでは、イエスが生まれた馬小屋の「救い」とクリスマスを明るく照らしてくれる暖かい光を表現。代表は、デザイナーとしてただ綺麗で美しいものを作るのではなく、社会的に意味があることをできることにやりがいを感じると語ります。
●エアプロジェクト
マッチプロジェクトの後続作がエアプロジェクト。このプロジェクトは、代表が、おばあちゃんに連れられて頻繁に訪れた寺院で嗅いだ香りからインスピレーションを受けたことがきっかけ。儀式的用途のほかにも、韓国には香道という文化があり、その伝統を現代にも浸透させたいとインセンススティックを生み出しました。
OIMUのインセンススティックは、国内の伝統香房と共同で制作。従来のお香=インセンススティックからは想像できないくらい綺麗な箱のなかにはリーフレットも同封。韓国文学から引用したフレーズがプリントされています。
最近ではお香というと儀式的なイメージをもつ若者も多いですが、香りと生活する楽しさをもたらすことに成功しました。インセンス独特の強い香りではなく、優しいマイルドさが特徴のため初心者にもおすすめ。パッケージも可愛いので、プレゼントとして購入する人も多いです。
- カカオフレンズ
OIMUはインセンススティックでも他のブランドとコラボを発表。韓国の国民的キャラクターカカオフレンズともタッグを組みました。通常のポップなカカオフレンズのデザインとは少し離れ、OIMUらしさが溶け込んだ韓国らしい雰囲気に。
●カラープロジェクト
OIMUの5番目のプロジェクト。韓国語に溢れる色の名前を途絶えさせないように、色の名前をイラストとともに紹介する本を出版しました。
韓国の様々な学会から専門家を集め、352種類の韓国語の色名を盛り込み1991年度に出版された「ウリマル色名辞書」を再解釈。わたしたちが毎日出会う自然に関する色を表記し、日々をよりカラフルに、もっとデリケートで豊かな感性を磨くお手伝いをしてくれます。
本にも登場する色をもとにしたブックマークも同封。外来語の色の名前では表現できない繊細な色使いが消費者を惹きつけました。
人気のブックマークは単品でも販売。若葉やとうもろこしの色と形を表現したしおりも。
いかがでしたか?デザインを通して、古いものに新たな命を吹き込み、いま見えている世界をもっと広げてくれる、そんなアイテムを世に送り出すOIMU。OIMUのアイテムを通して、あなたも新しい価値観に「出会える」こと間違いありません。
©️oimu https://oimu-seoul.com/